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特別戦 富士スピードウェイ 決勝レポート

11月17日(土)雨/ウェット〜11月18日(日)晴れ/ドライ

● 第1レース決勝  11月17日(土)雨/ウェット

予報通りの雨は朝から降り出し、第1レーススタートの午後12時45分にはレース中止には至らないギリギリかと思われる雨。
セーフティーカー先導のスタートも予想されたが、予定通りスタート。
激しい水煙で、前が全く見えない第1コーナーに入る高橋選手だが、このスリッピーなコンディションではFIAGT勢が装備するABSやトラクションコントロールなど高度な電子デバイスが大きなアドバンテージとなり、オープニングラップから大きく水を空けられ21位に後退。
2周目に入り19位、タイヤの温度上昇に伴いグリップの上がる事を待ち”忍”の周回を重ねるが、一向にグリップが上がらない。
同じキャラクターのタイヤを選択したと思われるマシン群は軒並みタイムが悪い。
2分を軽々と切って、55〜56秒台でラップするマシンと、2分どころか02〜04秒台が精一杯のマシンとに大きく分かれて行く。 レースも半ば10周を終え、17位。
今に至っても、スタート時と殆どグリップは変わらず、ペースを上げられないどころかコースにマシンを留める事すら難しい。
反対に上位グループは、周回を重ねるごとにタイムが上がっていて、差はどんどんと広がるばかり。
冷たい雨はレース最後まで降り続け、トップが22周チェッカーを受け、高橋選手は2周遅れの18位。
トップと同一周回のマシンは半分以下の10台だけで、クラッシュも無い中、スプリントレースとしては異例にバラつきの多いレースとなった。
チェッカー後のEVA紫電のタイヤは全く温まっておらず、タイヤチョイスが大きな敗因であった事は間違いない。 


● 第2レース決勝 11月18日(日)晴れ/ドライ

昨日と打って変わって、素晴らしい好天に恵まれた日曜日。
雨に阻まれ、高橋選手の紫電ラストレースは残念に終わったので、今日の加藤選手には本来のEVA紫電の雄姿を見せつけ花道を飾ってもらいたい。 しかし、ラストランとは言え、ライバルが手心を加えてくれるわけではなく、またEVA紫電は、好燃費と、卓越したタイヤライフを活かしたロングランのレースが得意であり、それらピット作業を伴わないスプリントレースでは何もアドバンテージとなる要素が無い。 昨年に比べればリストリクターで4段階・・・かなりパワーアップしているとは言え、300クラス全体に言える事で、相対的には有利な材料ではない。 それは予選タイムでも証明され、確かにコースレコード大幅更新となったが、ポールは更にコンマ7秒も早い。 “勝てる”要素があるとすれば、引退するEVA紫電に有終の美を飾らせてやりたいというドライバー、スタッフ、そしてファンの執念かもしれない。 そんな多くの期待を一心に集めたEVA紫電と加藤選手による、本当のラストラン、ラストレースが幕を開ける。 午後2時15分からのフォーメーションを終え、4列目左、7番グリッドにつく加藤選手。

レッドシグナル消灯!!レーススタート スタートは早くないが、右前にいた66号車アストンマーチンが更に遅く、その前に出て1コーナーへ・・・。 ところがスタートダッシュを決めた5番グリッドの3号車(GT-R)が88号車(ランボールギーニ)にぶつかり、トップ集団は大混乱。 直後にいた911号車(ポルシェ)は急減速、とっさに避けた加藤選手だったが、間に合わず911号車の左後に追突、右前を破損するも、走行に支障はない。 911号車も左リヤフェンダーを破損インナーフェンダーが飛び出す。 この混乱により上位グリッドマシンは大きく乱れ、トップこそ33号車(ポルシェ)と変わらないが、2番手に911号車、3番手はスタートで出遅れた66号車、そして2号車加藤選手が4番手と続く。 3周目に入ると911号車がオレンジボール(マシンに破損等トラブルがあるので修復の指示)によりピットイン、加藤選手は3番手に上がる。 ポールスタートにより1コーナーの混乱を無傷で抜けた33号車は、何とか逃げ切りたいところだろうが、意に反しペースが落ちてきた。 8周目には66号車にトップを明け渡し、翌9周目には最終コーナーで2号車にもパスされ3位へと後退・・・かと思いきや、パワーを活かしストレートで再び2号車加藤選手を抜き去る。 一進一退の攻防が繰り返されるのか思ったが、得意の100Rでアウト側から33号車を抜き去り、再び2位へと上がり、66号車を追撃。 41秒台で飛ばす、66号車と2号車。 それに対し、43〜44秒台へとガックリとペースの落ちた33号車は4位グループにも飲み込まれそうだ。 その為33号車がふたをする形となり、トップ2台と、6台が接戦となった3位グループとの差は広がり、9周目には2秒差だった2位と3位のギャップは、10周目には6秒へと大きく開き、レースは完全に66号車と2号車のマッチレースとなった。 両車ともペースは変わらず41秒台前半をキープ。 既に大きく差を広げた3位以下に脅かされる事は無いどころか、僅かずつリードを広げている。

通常接戦になると、お互いにけん制し合い、ペースが落ち、後方集団に差を詰められる事があるものだが、今日のこの2台は互いに引っ張り合いペースが落ちない。 お互いの差はずっと1秒前後、15〜16周目にはコンマ6秒まで肉薄するも、オーバーテイクには至らない。 66号車の吉本大樹選手は、09年、急遽レース活動を休止した高橋選手に代わり、2戦以降シーズン終了まで加藤選手とペアを組み、またそれまでも鈴鹿POKKA1000kmでは助っ人ドライバーとしてこの紫電で戦っており、正にこの紫電の”第3ドライバー”である。 その彼等66号車のチームも、先ごろこのレースをもってチーム解散が発表された。
2号車EVA紫電もこのレースで引退。
お互い、何かしらの哀愁を抱えたラストレースなのである。 
結局このクリーンバトルは最終ラップまで続き、終止紫電の露払いの如く前を行った66号車がトップでチェッカー。
その1・2秒後、EVA紫電は2位チェッカーを受ける。
コントロールラインから大きく1コーナー側となったピット、
そしてその前のサインウォールにマシンを振って通過する加藤選手とEVA紫電。

加藤選手が無線で絶叫した

「紫電ありがとう!!」は涙声となってクルーの心に届いた。 


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