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第4戦 スポーツランドSUGO 決勝レポート

7月29日(日) 晴れ/ドライ

● フリー走行  

設営日から、今日まで全く雨は無く、公式テストを含めてこれほどの天候に恵まれたのはセパンと今回だけである。朝のフリー走行時には、既に30℃を超え、路温も45℃近くになっている。しかしEVA紫電のセットアップは順調で、朝のフリー走行、走り出しは高橋選手。満タンの決勝想定で、タイムは 昨日練習走行ではマークできなかった25秒台を満タン状態でラップしているドライビングアドバイザーの舘さんからも「まだいける!◯◯もう少しアウトから!!等々」と無線で指導・・・。まだ伸びしろはある。  ピットシミュレーションを行い、加藤選手に交代、24秒台から23秒・・・23″053の2番手タイムを出す。5周計測で再びピットイン。今回、この時点では決勝スタートドライバーがまだ決まっていない。シミュレーションでも、高橋→加藤、加藤→高橋と2回ともレース想定のドライバー交代練習を行う。

 

再び高橋選手がコースイン。計測3周目、「SP(コーナー)でコースアウトした!でもチャンと走ってる。」と無線。立ち上がりでグラベルに飛び出したが、そのままコースに復帰したようで、特に接触も無く、ストレート通過を見ても“外観的”には特に問題は無さそうだし、ハンドリングの異常等の連絡もない。ところがタイムは27秒、28秒と悪化。「エンジン・・・パワーが無い!!」との事。とここで水温が高い事にも気づきそのままピットイン。グラベルに出た際、芝生の草が大量にエアインテークに詰まり、ラジエターへの通風を止めてしまったのである。コースアウトした際に、F1等でもよくあるトラブルである。最悪の場合はオーバーヒートでエンジンブローを招く。幸い、今回はエンジンブローにまでは至らなかったが、データーを見るとかなりの高温で数周回しており、決勝レース中においてのエンジントラブルの可能性も否定できない。できる事ならスペアエンジンと積替え、不安の芽は摘みとっておきたい。決勝レースまで約3時間。積み替えできるか?どうか?ギリギリでの時間である。無論、絶対無理な作業なら、このままで走る事のできる最善策を施すのだが、チーフメカの出した結論は「エンジンチェンジ」である。

と、決まれば、全スタッフが動き出す。トランスポーターに積まれたスペアエンジンを準備するスタッフ、重整備をする為のジャッキ(ミニクレーン)、専用工具を用意するスタッフ、走行直後で、まだ充分に熱の入ったエンジンルームにとりかかるスタッフ、狭いSUGOのピット裏の通路を確保するスタッフ等々・・・。40分程でミッションと共に、EVA紫電のテールカウル、ウイングが外され、1時間少々でエンジンが車体から分離した。
しかし、当然の如く、外す事より組み付ける方が時間が掛かる。メカニックのスーツは、吹き出す汗で全身変色してしまっている。

   

作業は順調に進むものの絶対的に時間が足らない・・・と思われる。
レースフォーメーション開始は14:00。10番のスターティンググリッドに並べる為には、その50分前13:10から13:13までの3分間のピットレーンオープンの間にコースインさせなくてはならない。間に合わなければ全車スタート後のピットスタートとなる。この抜きどころの少ないSUGOに於いて、ピットスタートは最悪である。

 

10:00から開始された作業12:00過ぎには大雑把にエンジン、ミッションは着いたが、配管配線等細かな作業は時間が掛かるし、慎重度も増す。またこの頃になって、突然雨が降ってきた。決勝レースで、ウェットも想定されたので、タイヤの準備も行わなくてはならない。全スタッフ、全く気も、体も休まる事がない。


13:00ウォームアップ走行開始。各チームが、一斉にコースインする中、EVA紫電はまだ手術の真っ最中!果たして間に合うか・・・。ピットスタートに覚悟を切り替えれば、45分以上の猶予は生まれるが、チーフメカの「絶対、間に合わせる!!」の決意は硬い。

   

13:10ピット内でエンジン始動。水漏れ、オイル漏れ、異音も無く、特に問題無さそうである。残り2分を切って、「ドライバー乗って!!」の声と共に、既に準備をしていた加藤選手がコックピットに乗り込む。既に各マシン、ピットを離れグリッドに向かっている。スタートタイヤ装着、ジャッ キが降ろされエンジンカウルが被せられる。 ピットの外に押し出されエンジン始動。ピットロードはグリッドに向かう各チームのクルーでごったがえしているが、このエンジン音で皆が道を開ける。ピットを離れたのがクローズ30秒前、ピットロード出口まで10数秒要する事から、コースインは本当にギリギリセーフと言ったところだった。思わずピット周辺から誰とはなく拍手が沸き起こる。


● 決勝レース 

だがレースはこれから。 台風が吹き荒れたかの如く、雑然となったピット内の工具類を片づけ、グリッドに向かう このグリッドまでの1周は、“手術後”重要な1周で ある。 無論加藤選手も充分承知、水温、油温、油圧、燃圧を次々と読み上げて来る。 異常無し。


グリッド上のマシンに、スーツも顔も汗まみれのメカが駆け寄る。エンジンカウルを外しチェックを始める。 加藤選手からも「(今の1周は)問題無い」と伝えられ、“まずは”一段落。スタートまではしばしの休息。幸い雨は直ぐに上がり、しっかり溜まった午前中の熱で、路面は全く何事もないかの如く乾いてしまった。

14:00フォーメーションラップ開始。
グリッドを離れるEVA紫電。
レースモードではどうなる・・・。


そんなメカの不安と、期待が入り混じってレーススタート。 先にスタートをきった500クラスは、第1コーナーで2台が絡んでコースアウト。 それを横目に1コーナーをクリア。 並走していた、9番グリッドの16号車(無限CR-Z)を2コーナー立ち上がりでパス、オープニングラップは9位へ・・・。


2周目には、何かトラブルが発生したと思われる66号車(アストンマーチン)がスロー走行に・・・労せず8位。3周を終え、トップ33号車(ポルシェ)2位、88号車(ランボルギーニ)以下、31号車(プリウス)、911号車(ポルシェ)、52号車(メルセデス)、3号車(GT-R)、87号車(ランボルギーニ)そして8位2号車EVA紫電と続く。この隊列は9周目まで動かず、トップとの差も約5秒と、大きく開いてはいない。 10周目に入ると500クラスが入り混じり、この混戦を利用し、3号車と87号車の順位が入れ替わる。 当面の目標が3号車に変わった加藤選手、500全車が過ぎ去ったあと3号車に肉薄。 各コーナーで詰め寄るもののストレートで離されるシーソーゲーム。 タイムは25〜26秒と予想より遅い・・・というか、トップグループも同様のペース。31号車の以外は全てFIAGT3マシン、長い給油時間を稼ぐ為もっとペースが速いと予想していたのだが・・・。12周辺りになると、25秒中盤の87号車に対し、追う3号車は24秒台も出しつつ、25秒前半・・・加藤選手も殆ど変わらぬ25秒前半。


14周を終える最終コーナーから登りストレート、3号車が87号車をオーバーテイク、これに加われない加藤選手は15周目、1コーナーで87号車に急接近。続く2コーナーで、鼻先をインにねじ込もうとするが果たせず、左3コーナー立ち上がり、喰らいつくが並ぶ事はできない。 87号車の左後ろに付けてヘアピンへのブレーキングでチャンスを伺う。僅かに鼻先が入るが87号車も切り込む!!EVA紫電の右前ホイールと87号車の左後部が軽く接触!!目の前で180度スピンする87号車、フルブレーキングでストップした2号車。幸い最初の接触だけにとどまり、再スタートする加藤選手。特にマシンにダメージは無い・・・と思われたが・・・「ハンドルおかしい!!」と無線連絡、緊急ピットイン。ジャッキアップ、ピット前で点検。 外観的には右ホイールのみだが、特にガタや変形は見られないが、とりあえず右ホイール、NEWタイヤで交換、再スタート。

しかし状態は変わらず、再度ピットイン。ピット内での再チェックでも特に異常は見られない。事態は深刻。最終コーナー等、横Gの大きな高速コーナーも有り、原因不明のままコースに戻すにはリスクが大きすぎる。既に2回のピットでレース権は失ってしまった。ここからアライメントのチェックを行い、少なくなった残り時間の為の再スタートで得るものも無い・・・・。


リタイアである。


ここSUGOでのノーポイントは痛い。だがスタッフ一丸となって、決勝グリッドに並べた気迫、チームワーク。ここでスタッフ一人一人が得た自信は、次の鈴鹿1000kmでは大きな武器となることだろう。


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