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第2戦 富士スピードウェイ 決勝レポート

5月4日(金)小雨のち曇り/セミウェット&ドライ

● フリー走行  曇り/セミウェット

雨続きのレースウィーク。今朝も雨こそないものの、曇り空ではコースをドライにすることはできず、各所に水たまりが残る。ここまでで、もっとも良いコンディションのコースに、まず加藤選手がコースイン。ミディアムタイヤの4周計測で52″742。そのままのタイヤで高橋選手に交代、路面コンディションがやや良くなった事に呼応して51″694までタイムアップし、このセッション11番手。フルタンク状態のマシンとすれば上々のタイム。決勝レースは晴れ“予想”だが、レース中盤となる午後4時頃から降水確率が高くなっている。波乱があれば勝機あり!


● 決勝レース 晴れのち雨/セミウェット&ドライ

500kmは110周となるが、500クラスとのタイム差から300クラスは6~8%程周回が少なくなる。前回の500kmは2008年。この時は102周が300クラスのチェッカーとなったが、今年は300クラスが速くなった為、もう少し多くなるだろう。完全ドライのラップタイム判らないので予測としては102~104周といったところか?
 予報通り、決勝レースウォームアップの始まる1時頃は、雲は多いものの晴れ。ところが、午後2時のスタートに向け、選手紹介、グリッドウォークが進行する最中には徐々に雲が流れ「あれっ雨か?」と、時折空を見やる人が出てくる。スタート10分前になると、明らかに雨とわかる水滴がポツリポツリと落ちてきた。各チーム、グリッド上にレインタイヤ(殆ど浅みぞ)は持ち込んできており、交換時間はまだあるが、交換を決断する程の雨量ではなく、コースは十分ドライである。
 フォーメーション5分前・・・雨脚は“傘がいらない小雨程度”になるが、まだドライタイヤで十分だ。だがここからも雨は“僅か”から“少し”ずつ強い雨となり、停車したマシンも一度ワイパーを作動させる程となった。路面も明らかにウェットのそれと判るようになり、急遽スタートはセーフティカー(以下:SC)の先導により定刻の午後2時SCスタートとなった。SCスタートになると、そこから“追越しできない”レース開始となりレースラップはカウントされる。ジワリジワリと、雨脚が強くなり、ここでインターミディタイヤ(浅みぞ)に交換するか、どうか?各チーム選択の判断が迷う中、ストレートをSC先導で各マシンが一列で通過する。その一団から1台の500と、3台の300がピットロードに駆け込む。早くもタイヤ交換を決断したチームがあった。これをきっかけにピット前は大きく動き、我々も含め、各チームタイヤ交換の準備に入る。この雨は、この後強くなるとは思えないが、ドライタイヤで走り続けるメリットはなく、この予定外のピットインをSC時に済ませた方が良いと判断。雨が上がり路面が乾き始めてドライタイヤに交換するか、反対に雨が強くなって深みぞレインタイヤに交換するとしても、それを次のルーティンピットとすれば良い。重要なのはそのタイミングである。このレースは、ドライバー交代を伴う、2回のピットストップが義務付けられている。JAFGTマシンなら2回のピットストップで、レースを走り切る事が十分可能だが、パワーの代償として燃費の劣るFIAGT3マシンの多くには厳しく、3回のピットストップ(給油)が必要となるかもしれない・・・。ピットインを2回で済ますにはタイムを落とさざるえないであろうが、レースでは飛ばして、1回の給油時間を稼ぎだす作戦を取ることだろう。2周を終え、13台の500と、17台の300が一斉にピットロードに駆け込む。順調に作業を終えた2号車エヴァ紫電も、ピットロードの“渋滞”にはまり、数秒停車するという事態にも見舞われたが、大きな遅れも無くSCの隊列に復帰、タイヤ交換をしなかったチームに先行されただけの19番手。
 翌3周目を終えたところでSCが下がり、本当のレースが始まり、5周目には16位、6周目、14位に上がる。ところがこの頃になると雨が上がり、薄日が差し始める。ピット前はまだ濡れているが、40台のマシンが走るコース、ライン上は徐々に乾き始めている。そうした状況を判断し、7周目には早くもドライタイヤに交換するチームも出てきた為、11周目には6位、12周目5位と見た目の順位は上がって行くが、52秒前後で走行する加藤選手に対し、ドライタイヤ勢は47、46、45秒台へとドンドンとタイムを上げてきている。我々も早くドライタイヤに履き換え、遅れをとらないとしたいところだが、義務ピットインの一回を済ませたいのである。その為には15周以上を終了した時点でなくてはならない。というのは、2回のピットインで共にガソリンを満タンとして走り切れる距離(周回)は大体決まっている。仮に満タンで45周走れるとした場合、2回で90周、レース終了が104周と考えた場合、最初の給油までに最低14周は走っておかなくてはならなず、もし10周辺りで満タンにしても残り4~5周でガス欠になる恐れがある。以上は大雑把な計算だが、決勝レースまでの燃費データーと、実際にリアルタイムでのレース中の燃費とのすり合わせを行い、また500とのタイム差からの最終的なレース距離、そのレースウィークにおける実際の給油スピード(これは厳密にはサーキットよって僅かに異なる)等々から、給油時間はレース中に最終決定をしている。
 13周を終えた時点では300クラス3分の2に当たる16台がドライタイヤへの交換を終えているが、0号車(BMW)、43号車(Garaiya)等、一部を除き、その多くはドライバー交代を行なっておらず、あと2回のピットストップを残している。
 16周を終え加藤選手ピットイン。満タン給油。タイヤはインターミディからドライタイヤへ・・・そしてドライバーは高橋選手に交代。残り周回は約90周。これをあと1回の給油、ピットストップで済ませるには、燃料がほぼ空になる45周のロングスティントとなる。11位でマシンを受け取った高橋選手、直ぐに47秒台から46秒台へ・・・。TVモニターに写し出される高橋選手や区間タイムを見て、加藤選手から「100Rはもっと行ける!!」とアドバイスが飛び、45秒台へとタイムアップ。
渡辺エンジニア「このタイム(45秒台)をキープしてくださ~い。」
26周目、トップはNo15(ポルシェ)、次いで11号車(アウディR8)、3号車(GT-R)、33号車(ポルシェ)とFIAGT3が占める。これらFIAGT3マシンは43~44秒台で周回を重ねるが、多くはあと2回のピットストップが必要な為、レース中盤には見た目の順位が大きく入れ替わる事となる。最終的に各チームのルーティンピットが2回か?3回かは分からず、現在の本当の順位は、2号車がルーティンピットを完了するまで分からない。見えざるライバルとの戦いに勝ち抜く為、ひたすら45秒台をコンスタントにラップする高橋選手、既に40周を終えた57周目には6位となり2回目のピットインも迫る。この時点でトップは0号車(BMW)、2番手は15号車、3番手は66号車で、2号車エヴァ紫電は同一周回の6位ながら、トップからは95秒差を付けられていた。  だがこの後、今回のレースの明暗を大きく分けるアクシデントが発生する。58周を終え、トップの0号車がピットイン、ここで15号車がトップに立つが、そのストレートでタイヤがバースト!マシンはコントロールを失いピット出口の先のガードレールに激突、反動でコースを横切りストレートのグリーンにストップ。幸い他車を巻き込む事はなかったが、マシンは大破し、ドライバーは命に別状はないものの重傷。この救出作業と事故処理の為、SCが入りレースは中断。こうした場合、一旦SCを先頭に一列に走行、ストレート上でクラス別に停車し、その後クラストップ車両の“前にいる”車両だけ、コースを1周し隊列の後ろに並び、再スタートに備えるのである。2号車エヴァ紫電の真後ろ、66号車は、直前まで3位だったのだが、0号車のピットイン、15号車のアクシデントに伴い、現時点ではトップである。その前にいる2号車はコースを1周し300の隊列の後ろに並び、順位は4位となる。100秒、約1周差が一気に縮まった事になる。 その後SCの先導で再スタート、61周目に入るが、このスロー走行時に高橋選手ピットイン。2度目、そして最後のルーティンピットである。ガソリンは満タン、ドライバー加藤選手へ。タイヤは終盤でもプッシュできるようハードのドライタイヤ。終盤決戦への準備を整えコースへ・・・。62、63周とSC走行が続き、その間にタイヤを暖め、64周目レース再開。猛然とスパートを駆ける加藤選手は43秒台、8位で通過。トップは66号車、続いて11号車、911号車(ポルシェ)0号車、87号車(ランボルギーニ)43号車、31号車(アウディR8)、そして2号車エヴァ紫電。66号車からはマイナス23秒。0号車と43号車以外は、まだ義務ピットインを1回残しているので、実質の目標は43号車と0号車だけとも言えるのだが・・・。
 70周を過ぎた辺りから、まず87号車、続いて911号車、31号車もピットイン。自動的に2号車加藤選手は5位に上がる。この後トップになると思われる0号車とはマイナス11秒、ラップタイムは殆ど同じ44秒台。ところが79周目、実質トップとなる0号車が500と接触、スピンにより大きくタイムロス、43、2号車が先行することとなった。そして83周目には66号車、86周目には11号車がピットに入り、順位が明確になった。残り18周、トップ43号車、マイナス4.5秒差で2号車加藤選手、3秒差で0号車が続き、この3台の争いに絞られた・・・と思われたが、この頃になって、終盤の“ドラマ作りの為か”再び雨が落ちはじめる。とは言え、90周を過ぎた辺りではトップ3台も43~44秒台と、まだタイムに影響する程ではないが、92周目にはコースの一部ではかなりスリッピーな路面へと変わりタイムも46~47秒台へと落ちる。そして93周目、スリッピーな路面で真価を発揮する、ABS等電子デバイス装備の許された0号車にパスされ加藤選手は3位にドロップ。
 残り10周を切る頃からは、更に雨脚も強くなりタイムも50秒台に落ち込むが、タイヤを換える程の雨量とはならず、ドライタイヤで確実にゴールを目指す。このコンディションにペースが極端に落ちたトップ43号車は、96周目に0号車に抜かれ、そして加藤選手も98周目にパスし3位へと後退する。そして残り5周、ピットストップにより順位を落としていた66号車が4位にまで猛追、加藤選手の52秒台対し48~49秒台のハイペースで2号車の14秒後方に迫る。 だがそれに呼応して48秒台、そして45秒台にまでタイムアップして振り切らんとする加藤選手だが、毎周約2~3秒づつ詰め寄る66号車は、101周には43号車をもパスし3位に上がり8秒後方に迫る。102周プラス6秒、103周プラス3秒!しかし104周、0.3秒差で押さえ込み2位でチェッカー!
このレース、序盤の雨、中盤のアクシデントに伴うSC介入、そして終盤の雨と、どこのチームも、当初予定した戦略プランの大幅変更を余儀なくされる荒れたレースとなったが、我々はこれらを充分利用し順位を上げる事に成功した、素晴らしいレース展開となった。こうした状況下では、ドライバー、マシン、そしてピットクルーの総合力が真価を見せ、不得意なここ富士での2位は正に優勝に匹敵する結果と言える。
 続くセパン、SUGO、鈴鹿は、エヴァ紫電にとって全て優勝経験のある相性の良いサーキット。チャンピオンへの足がかりを作る3連戦、大いに期待していただきたい。


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