REPORT

第6戦 富士スピードウェイ 決勝レポート

9月9日(日) 晴れ/ドライ

フリー走行  

今日の雨予報もどうやら外れ、朝から青空が広がった。  フリー走行での高橋選手は44秒台を連発、タイムも安定。無論満タンのレース想定で44″061まで詰め、レースラップとしては充分以上だ。続いて高橋選手から加藤選手へのドライバー交代、タイヤ交換シミュレーション。今日のスタートは高橋選手。そう決勝レースは高橋選手スタート、そして加藤選手へ繋ぐ予定だ。  加藤選手も43秒中盤でマシンチェック。マシンのバランスも良く、レースラップも悪くないと思いきや、このフリー走行で上位4台は41秒台、更に8台が42秒台と、圧倒的なタイム差。このフリー走行、加藤選手の43″439で16位。フルタンクでもバランスの良いEVA紫電にとって、レース想定で走るこのフリー走行において、これほど順位が低いことは珍しい。


決勝レース 

決勝レーススタートは午後2時。その65分前、スタートドライバーの高橋選手が8分間ウォームアップの為コースイン。朝のフリー走行からのセット変更点の確認となるが、いまひとつリズムが合わない高橋選手にとっては“ドライビング”の再確認でもある。ところがこのウォームアップ走行においてブレーキをロックさせ、フラットスポットを作ってしまった。フラットスポットとはハイグリップなレーシングタイヤにおいて、ブレーキをロックさせたり、スピンなどでタイヤの回転が止まったまま、横方向にスライドした時などにタイヤの一部を偏摩耗させてしまうことで、この状態で走行すると激しい振動を伴い、とてもレースができる状態ではなくなってしまい、レース中でも交換を余儀なくされる事は珍しくない。しかしこのSUPER GTのルールでは、決勝の“スタート時”には、昨日の予選終了後マーキングされたタイヤを装着していなくてはならないのである。

 今年岡山で、このスタート用マークキングタイヤを1本交換しているが、予選時のアクシデント(接触)の為、ルールにのっとり審査委員会の承認手続き経た上での交換であり、今回はこれに該当しないのである。選択肢は3つ。このタイヤのままグリッドからスタートし、直後、または、ルーティンピット時にタイヤを交換する。または別のタイヤに交換し、グリッドについてスタートするが、当然ドライブスルーペナルティを受ける事となる。そしてチーム選択したのは、決勝レースがスタートするまで、指定のマーキングタイヤを装着したままピット前に待機し、スタートと同時にタイヤを交換しレースに加わる・・・これがもっともリスクとタイムロスが少ない選択である。


グリッドに着くためのピットオープンが終了、ピットロードがクローズとなる。この時点でピットスタートという選択肢のみとなる。約40分のスターティングセレモニーが続く中、ピット前で待機するEVA紫電。グリッド上同様、マシンチェックを怠らないメカ。コンセントレーションを高めるドライバー。フォーメーション開始5分前。グリッド上では全ての作業が禁止されるが、ピット前での作業は続けられ、スタートの準備に入りドライバーも乗り込む。フォーメーション開始、全車ゆっくりとグリッドを離れて行く中、ピット前でエキゾーストノートが響く。今回他にもピットスタートなるマシンがあり、それらのマシンがピット離れ、ピットロードエンドにマシンを着けている。フォーメーションラップを終え、セーフティカーがピットロードに入る。  グリーンシグナル点灯でレーススタート!  EVA紫電作業開始!  ジャッキUP、既に前輪ナットは外されている。通常前輪から後輪への移動は給油中に行われるので、移動時間はロスとならないが、今回は全てがロス時間となる。いつもと異なる素早さで移動し後輪に取り掛かるタイヤマン、確実に作業終了。ジャッキダウン、エンジンスタート、ピットを離れる高橋選手。しかしエヴァ紫電のピットからピットロードエンドまでは“果てしなく”長く、60km/h制限が恨めしい。既にピットスタートの2台は影も形も見えない。  この時点で順位は20位。このレース66周だが、300クラスは恐らく61〜62周。残り40周以上を加藤選手に託す。当初の予定ではここでタイヤを左2本のみ交換として、ピットロス(8秒前後)を削る予定だったが、この位置では大きな意味を持たないこと、終盤のプッシュに無理が効かなくなると考え、タイヤを4本交換。加藤選手を送り出す。19位はピットイン直前まで35秒前を走っていた27号車(イカ娘フェラーリ)で、同じ周にピットイン。給油時間の差から、ピットアウト後は22秒差に縮まる。このピットアウトの時点で既に17位まで周回遅れにされており、勝負権は失っていたが、何とかポイント圏内(10位)までEVA紫電を導こうと加藤選手の力走が始まる。  その後は各車ルーティンピットが始まり、順位が入れ替わり、差は縮まって行く。26周を終え18位、翌周17位、32周目16位、ポイント圏内10位を走る11号車(アウディ)とは65秒差、残り30周。1周2秒以上詰めるEVA紫電!チャンスはいつ転がり込むかは分からない。僅かなチャンスを活かすべく44秒前半で飛ばす加藤選手。序盤トップを快走していた66号車がトラブルの為か徐々にペースダウンし、代わってトップに立った33号車(ハンコックポルシェ)が35周目辺りから真後ろに迫ってくる。43秒台のハイペースだ。その後も2、3位を形成する16号車(CR-Z)と 31号車(プリウス)の2台のハイブリッドが迫る。序盤コースアウトし大きく遅れた31号車は42秒台とトップより早いペースで追い上げているが、16号車は43〜45秒台とタイムがバラつきアベレージでは加藤選手の方が早い。だが周回遅れが、2、3位を抑えこむわけにもいかず、41周目に16号車、44周目には31号車を共にストレートエンドからのブレーキングで先行させる。その44周目、加藤選手はダンロップコーナーからのテクニカルセクションで前を行く27号車に揺さぶりをかけ肉薄する。そして45周目得意の100Rで慎重に横に並びヘアピンの進入でオーバーテイク!14位へと上がる。


残り周回は15周。ポイント圏内の10位、30号車(アウディ)からは43秒マイナス。13位は11秒前を行く14号車(IS350)は昨年から参戦しているが、今年度仕様への改造が認められ、施されている“早いはず”のJAFGTマシンが、いまひとつセットアップが決まらず低迷しているようだ・・・。その14号車との間には1周先行しているトップ3台、33号車、31号車、16号車が入っている。1.2位の2台は、48周目に14号車をオーバーテイク。16号車は、ここに来てペースが44〜45秒と遅くなったのに対し、終盤の追い上げの為タイヤを温存していた加藤選手は43秒台と明らかに早い。50周目には1秒差、53周目にはコンマ3秒差とテールtoノーズ。ペースは完全に加藤選手が上回り、タイヤにもまだ余力があるが残り周回は少ない。このまま16号車の後ろでは、13位14号車にも離されてしまう・・・。54周目、16号車を先行させた場所と全く同じストレートエンドから1コーナーのブレーキングで今度はEVA紫電、加藤選手が16号車をオーバーテイク。順位が入れ替わるわけではないが先を急ぐ。  すぐ前になった14号車は僅かコンマ7秒前!55周目の終盤に入ってガソリンも減ってきた事とも相まってか、加藤選手43″349のベストタイムをマーク!タイヤの余力も充分なようだ。ポイント圏内の10位とは40秒マイナス、残り周回6周では到底届かず、11位以下は全て単なる完走に過ぎないが、目の前のライバルに闘争心を燃やさないのであればレーシングドライバーの資格がないのと同じ。57周目、ストレートは僅かに早い14号車のスリップに着くEVA紫電、だが1コーナーのインをキッチリ抑える14号車、EVA紫電得意の100Rでも先行を許さない。ヘアピンから立ち上がり、ダンロップコーナーにむかう300RではEVA紫電が先行!サイドの視界から消えた14号車だったが、ダンロップコーナー進入で再び前に出る。左、右の切り返しでラインが交錯!殆どサイドバイサイドの激しいバトルが繰り広げられるが、最終コーナーからは14号車先行。この14号車とのバトルは最終ラップまで続いた・・・。  そして、500トップがチェッカーを受け、続いて300クラストップの33号車がチェッカーを受ける。最終コーナー側ストレート、先に見えたのは14号車、EVA紫電は僅かコンマ25秒差で後塵を拝する事になり61周、13位チェッカー。苦しい3戦連続ノーポイント。シリーズポイントとしては1位とは35ポイント差で残り2戦。40ポイント以上の差がついていないので理論上チャンピオンの可能性が消滅してはいないが事実上チャンピオン争いからは取り残されたと言える。だが次戦オートポリスは紫電06年初優勝のサーキット。8月末のテストでも上々の仕上がり。ここで一矢報いて、チャンピオン争いをかき回してやりたい。   


レポートトップへ戻る